1 選挙制度
身近な政治、すなわち選挙を切り口にして政治学に入門していきたいと思います。
- 民主主義 (democracy) :代議制民主主義/直接民主制
- 独裁体制 (dictatorship/autocracy)、権威主義体制 (authoritarianism)
代議制民主主義における選挙
- 多様な意見を持つ人々の間で合意する方法(の1つ)
- 代表者
- 本人・代理人 (principal-agent) モデル
この章では、選挙のルール(選挙制度)を理解します。その後、有権者から見た選挙、政治家・政党から見た選挙を扱います。
1.1 集団での「決め方」
民主主義の根幹:多様な意見を持つ人々の間での意思決定(意見の集約)
- 選挙、住民投票など
- 世界価値観調査 (World Values Survey: WVS)
多数者の専制 (tyranny of majority)
一人一票の多数決は「民意」なのか?
- 社会的選択理論(経済学の一分野)
- 坂井豊貴 (2015)「多数決を疑う」
- 坂井豊貴 (2016)「決め方の経済学」
投票=有権者の好みを結果に変換するブラックボックス
1.1.1 政策=政治家ではない
オストロゴロスキーのパラドックス
有権者 | 金融 | 外交 | 原発 |
---|---|---|---|
1 | A | A | B |
2 | A | B | A |
3 | B | A | A |
4 | B | B | B |
5 | B | B | B |
1.1.2 票割れ
人数 | 4人 | 3人 | 2人 |
---|---|---|---|
1位 | A | B | C |
2位 | D | C | E |
3位 | E | D | D |
4位 | C | E | B |
5位 | B | A | A |
- 1860年、2000年アメリカ大統領選挙
(一般的な)投票用紙→1位の候補(の情報)のみ
1.1.3 様々な決め方
多数決が唯一の決め方ではない。
- 決選投票付き多数決
- コンドルセルール
- ボルダルール
- (是認投票、マジョリティジャッジメント)
ペア勝者/ペア敗者
1.1.4 サイクル
コンドルセのパラドックス
人数 | 6人 | 5人 | 2人 |
---|---|---|---|
1位 | A | B | C |
2位 | B | C | A |
3位 | C | A | B |
- 投票の順番と結果
∴選挙のルール(制度)→選挙結果
1.1.5 どのように授業をするか?
26人 | 79人 | 5人以下 | 5人以下 | 31人 | 16人 |
---|---|---|---|---|---|
対面 | 対面 | オンライン | オンライン | オンデマンド | オンデマンド |
オンライン | オンデマンド | 対面 | オンデマンド | 対面 | オンライン |
オンデマンド | オンライン | オンデマンド | 対面 | オンライン | 対面 |
1.2 選挙制度
どのような選挙の制度があるのか?
- 選挙制度
- 建林正彦、曽我謙悟、待鳥聡史 (2008)「比較政治制度論」
1.2.1 代表的な選挙制度
一般的に多数決であることが多い選挙制度においても様々な種類がある。
- 多数代表制
- 相対多数制
- 小選挙区制
- 大選挙区制
- 連記式
- 単記非移譲式投票 (single non-transferable vote: SNTV)
- 中選挙区制
- 絶対多数制(省略)
- 相対多数制
- 比例代表制
- 名簿式
- 拘束名簿式
- 非拘束名簿式
- 単記移譲式(省略)
- 名簿式
- 混合並立制
- 混合併用制(省略)
1.2.2 日本の選挙制度
- 国政選挙(1994年選挙制度改革)
- 衆議院選挙
- 参議院選挙
- 地方選挙
- 地方議会選挙(例、札幌市議会、北海道議会選挙)
- 地方首長選挙(例、札幌市長選挙、北海道知事選挙)
1.2.3 選挙制度の比較
選挙制度を比較する視点(の一部)
- 死票の多寡
- 戦略的投票/誠実投票
- 小政党の生き残り
- 政党内の同士討ち
- 個人投票/政党投票
- 比例性
- 意見の集約
- 汚染(連動)効果、マルチレベルの政治制度ミックス
∴あらゆる選挙制度は(なにかしらの意味で)不完全
→有権者は選挙においてどのように行動するのか?